2015年4月、鹿児島県肝付町に全寮制男子校として県立の中高一貫教育校楠隼中学校・楠隼高等学校が設置されます。
今回の学校レポートでは、鹿児島県教育庁高校教育課の方に、この全国初の全寮制男子校となる楠隼中高の特色・魅力についてお伺いしました。
夢は宇宙! JAXAとの連携
学校の特色として一番の関心が持たれるのがやはり、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との提携の部分だと思われるのですが、宇宙航空教育のモデル校を目指すということで、その具体的な内容や学習のレベル等について教えて下さい。
JAXAとは、平成25年11月14日に鹿児島県教育委員会との間で宇宙教育活動に関して協定を結び、楠隼中高一貫教育校を推進モデル校とすることになりました。具体的な内容としまして、総合的な学習の時間の中で週1時間程度、自分のテーマを設定し、課題研究を行います。授業の推進のため、JAXAに素材を提供してもらいながら、年間計画とともに学校独自の教科書を活用します。また、年間計画の中で、年6回程度JAXAの技術者、研究者に来ていただき、宇宙開発に関わる方々の思いや宇宙への挑戦過程、宇宙開発で得られた知見などの講話や授業をしてもらいます。また、生徒だけではなく、教員もJAXAから研修を受けることになっています。
年度末には生徒一人ひとりが、研究冊子「シリーズ宇宙学」を作成し、年度ごとに公開発表を行う予定です。この「シリーズ宇宙学」をとおして、生徒に好奇心・探求心・広い視野を身に付けさせ、自分の夢や未来について考え、根気強く挑戦しようとする意欲を高めたいと考えています。
その学習内容については、専門的な講義や講演を聴くことができ、図書館にも多様な宇宙学に関する書籍・資料を揃え、パソコンも使いますので、生徒が自分の興味・関心に応じて研究テーマを決め、学習内容の深化拡充を図ります。
JAXAとの連携のほかにも、トップリーダー教室やキャリア教育などといった形で、従来の学校教育の現場を乗り越える、あるいは拡張していくねらいがあるといった印象を受けました。具体的な内容や目標とされるところなどについて教えていただければと思います。
トップリーダー教室では、著名な経営者、研究者、芸術家など日本や世界をリードする方々に来ていただき、講演をしていただきます。失敗談も含めて御自身の生きて来られた歩みについて直接講話していただき、人としての在り方、生き方、挑戦の大切さ、失敗を恐れない態度などを知り、ひいては社会や組織の中でどのように生きていくかを学ぶものです。
キャリア教育への取り組みですが、生徒が主体的に将来の進路を選択し、決定するために必要な能力を育成します。また、卒業後の生活によりよく適応し、さらに進歩するために必要な能力を育成します。
まず、農業漁業民泊体験をつうじて第一次産業に支えられている日本や地域の実情を理解します。また、九州内の大学・企業研修については、外国語や外国文化の研究を牽引する大学を訪問し、研究者や学生との交流を通して自己の生き方について考え、将来を見通した進路意識を高めさせるとともに、アジアを含めた国際社会の実態とこれからの展望について知見を広げる機会としていきます。また、九州の主な産業に触れさせる活動を通して、郷土に対するものの見方や考え方を広げさせていきます。
さらに、海外大学・企業の研修では、中学では経済成長が著しく工業や科学技術が発達しているアジアの国々を、高校では英語圏を直接見聞、交流することをとおして、世界規模で物事を考える人材を育成していきます。
卒業後の生徒の進路について、お考えのところがあればお聞かせください。
国内外の大学など、本人の希望する進路目標に応じ、その進路に対応できる生徒を育て、また、その進路の実現のために万全のサポート体制を整えます。寮と学校でしっかりと学習を行い、本人の希望する大学に行けるように支援し、例えばその中で、もしJAXAの研究者なりたいと考え、関連する大学に入学したいと希望するのであれば、行けるだけの学力をしっかり身につけられる学校にしていきます。
独自制度・カリキュラムについて
難関大学への道を拓く中高7限授業との事ですが、カリキュラムや、苦手だったりついていけない授業があった場合のフォロー体制などについて教えていただければと思います。
国語・数学・英語について、週確認テストを実施します。確認テストは、1週間に学習した内容の復習を中心に行い、定着が図られているか確認を行うものです。各教科の教科担任が問題検討を行い、学習指導員が寮での学習時間にテストを実施した後、解説します。そこで基準点に満たなかった生徒は学校で追指導を行い、確実な定着を図っていきます。
同様に、国語・数学・英語については、年間3回、期末考査後に総復習や追テストを実施し、基礎基本の定着を図ります。
高校から入学する外進生については、高校1年では内進生(中学入学生)と別のクラスとし、教育課程を変えるとともに、寮での学習や土曜講座などで、補充学習を行い対応します。高校2年生から同じクラス編成になります。
「楠隼ダイアリー」について、目的などを教えて下さい。
時間管理や目標管理ができ、学習や生活をマネジメントできる生徒を育成するために、本校独自の「手帳」を準備します。これが「楠隼ダイアリー」です。中学1年生では、学校設定教科として17時間「楠隼ダイアリー」の時間を設定し、高校1年では4月からLHRで数時間を設定し、手帳の使い方やスケジュール管理、学習内容の振り返りと、寮での夜間学習や週末の学習の計画などを行います。担任と寮監とにより毎日チェックを行い、生徒の学習状況・生活状況を把握し、気になった生徒には教育相談を行い、計画・実行・評価・改善のサイクルを繰り返すことによって、目標に向けて主体的に生活する生徒を育成したいと考えています。
その他、独自カリキュラムなど、教育面において注力される部分について教えて下さい。
学校設定教科「ことば探究」は、中1から高1まで、自分の言葉で自分の考えを筋道立てて書いたり、話したりする力を育成することにより、課題解決的な学習や体験学習などに活用し、教科学習を側面で支えていきます。具体的には、100字程度の作文から始まり、ディベートやパネルディスカッション、大学入試の小論文や大学での講義などに対応する力を育成し、実践的な表現力の育成を図るものです。また、相互発信・相互評価などにより、仲間づくりや豊かな人間性の育成に努めていきます。
また、先取り学習を実施するとともに、定期テスト終了後や年度当初にリメディアル期間(復習期間)を設けることにより、基礎基本の定着を図ります。また、高校2年からはより実践的な講座や課外授業などを寮と学校で計画し、進路希望の着実な実現に向けていきます。民間との連携も計画しています。
ほかにも、朝の活動について、中学1年から高校1年までは漢文素読や、英語リスニング、数学力アップテストなどを行い、「読み・書き・算」の強化を図ります。高校1年後期、高校2・3年では、大学受験に対応した朝補習を行っていきます。
また、土曜講座では、国語・数学・英語の発展学習を行い、進路実現のための学力を育成します。
寮生活はどうなる?
全寮制との事で、県外からの生徒も見込まれているとのことですが、学校と地域との関わりについてお考えのことがあればお願いいたします。
地域と関わり親睦を深め、鹿児島を第2の故郷と感じてもらうために、農業漁業民泊体験、ホームステイ制度、ボランティア活動を設定します。そうした活動の実現のために、肝付町に地域支援委員会を作っていただくこととしています。
まず、農業漁業民泊体験は、地域で農業や漁業に従事している家庭に宿泊し、農業・漁業を体験させることで、農業・漁業の大切さ、食の大切さ、働くことの喜びや大切さを学ばせると同時に、これらの仕事に従事する方々と語り合うことを通して、鹿児島を第2の故郷として愛着をもつきっかけにしたいと考えています。
次に、ホームステイ制度は、主に県外や遠方から入学した生徒が地元の家庭に宿泊し、家庭の温もりを感じさせ、地域との絆を深めながら心身の健康を育みます。
ボランティア活動は、地域の方々とふれあいながら、ユニット毎に地域の清掃などボランティア活動を行い、郷土愛を深めるとともに、郷土の良さに気づかせていきます。
ほかにも、肝付町から以下のような体験活動の提案が出ています。寮行事で選択し、実施していく予定です。
田植え体験、稲刈り体験、落花生堀り体験、ポンカン収穫体験、タンカン収穫体験、ブドウ収穫体験、キュウリ収穫体験、サツマイモ収穫体験、しいたけコマ打ち体験、ウニ丼作り体験、つけあげ作り体験、漁船クルーズ体験、魚のさばき方体験、漁協セリ体験、カヌー体験、高山川いかだ下り、高山川生き物調査、そうめん流し、アケボノツツジ観察体験、そば打ち体験、ピザ作り体験、フラワーアレンジメント体験、しめ縄作り体験、竹細工作り体験、キャンプ体験、星空教室、鮎・ヒラメ放流、ウミガメの赤ちゃん放流、昔の暮らし体験活動、川の少年団活動、ロケット祭りへの参加
寮生活に不安を感じる保護者もいるかもしれませんが、寮生活について詳しいお話をお聞かせください。
保護者も生徒も安心して寮生活を送れるような学校側のご配慮などがあれば、その点についてもお願いいたします。
寮の環境についてですが、自分に語りかけ、リラックスする場として、全室空調完備の個室を用意しています。
また、生徒の安全を見守るスタッフとして、舎監・寮監・ケアサポーターを配置しています。舎監は学校の教員が交代で担当し、生徒の安全管理や緊急時の対応にあたります。寮監は、交代で24時間生徒の安全管理や病気時の生徒の搬送を、ケアサポーターは、病気の生徒の対応や保健衛生面の管理などをそれぞれ行います。
食事は、安心・安全な地元の食材も活用し、管理栄養士によるバランスのとれた美味しい食事を提供します。
生活面では、規則正しい生活を行い、礼儀や自立する心を育成します。寮生徒会を中心に朝の運動、清掃、寮行事をフロア単位で行い、縦の人間関係を学び、相互協力の精神を養います。前項でもお示ししましたが、地元の様々な体験活動を寮行事で行うことも実施していきます。
平日の授業終了後、20時に夜の学習が始まるまでの間は、部活動や夕食、入浴時間以外の空いた時間は生徒の自由時間とし、その時間帯は外出できます。土日についても同様です。いずれも外出時には所在確認のため外出届の提出が必要です。土日については、金曜日の夜から日曜日の夕方までの間で帰省することもできます。帰省時には外泊届を提出してもらい、祝日については土日に準じるかたちになります。
長期休業中は、閉寮期間を定め、その期間は帰省させます。閉寮期間以外の期間については、各自の都合に合わせて帰省できます。こうした帰省については、学校や寮の行事及び課外授業等や部活動などとの調整が前提になります。
保護者にどうやって情報を伝えるかは、紙面で行う方法と保護者のメールやホームページなどで見られるような電子媒体の方法を検討しています。生徒が寮から保護者に連絡を取る手段としては、公衆電話を設置することで対応したいと考えています。
保護者との面会は、事前に連絡をしてもらえれば可能です。寮内に面会用のスペースもあります。
入学志望の児童の皆様・保護者の方へ
部活動について、どのような部活動を予定されていますか。
学校説明会の中でアンケートを実施し、参加者の希望も参考にしています。運動部では、野球、サッカー、テニス、バドミントン、剣道を、文化部では、吹奏楽、美術、パソコン、天文学、英語などを検討中です。今後は、場所や指導者、生徒数などを考慮し決定していきます。
そのほかにも、入学後、生徒の希望を聞きながら、同好会からスタートし、希望者が多くなれば部に昇格させる形を作っていきたいと考えています。
その他の学内外の行事や、学校生活について、特にお知らせいただけることがあればお願いします。
「鹿児島から学ぶ教育」を実施します。
- 薬丸野太刀自顕流体験は、肝付町高山地区が、幕末の薩摩藩士が取り入れたことで有名な自顕流のゆかりの地とされており、土曜講座の中で体験することにしています。この体験を通して、心身を鍛え鹿児島の歴史に触れる機会としていきたいと考えています。また、体育大会では演武を行いたいと考えています。
- 島の自然や歴史、文化を体験し、鹿児島を知る機会の一つとして、南西諸島探訪として鹿児島県の南西諸島を訪問する予定です。
- 大隅地域・薩摩地域巡検は、中1と高1で大隅半島、高2で薩摩半島を歴史・文化コース、産業コースに分け、地元についての理解を深めたいと考えています。
- 佐多岬遠行は、九州の最南端である佐多岬までの42.195㎞を歩くことを通して、忍耐力と協調性を育成します。
適性検査の模擬版を公表されるとのことですが、貴校を志望される児童の皆様には、どのようなことに注意して受検まで勉強していったらよいかアドバイスをお願いします。
今春、適性検査の模擬問題を公表する予定です。適性検査では、コミュニケーション能力や表現力、創造力等の能力が必要であり、適性検査では書くことが多くなることから、日頃から日記や新聞を利用して書いて、考える練習をして欲しいと思います。
男女共学にしてほしいといった声も出てくるかとはと思いますが、将来的なビジョンとして、男女共学化についてはお考えでしょうか。
男子校としての開校を決定し、開校に向けての準備をしているところですので、学校としての運営が安定するまで全力を注ぎたいと考えています。
その他、学校について自由にお知らせいただけることがあればお願いいたします。
平成26年度の学校説明会は、5月から実施し、北海道から沖縄まで、全国津々浦々で開催する予定です。また、9月から入試説明会も実施します。その開催地についても日程が決定次第、ご案内しますので、ぜひ、ブログやホームページなどでご覧ください。
今年度の学校説明会は24カ所で行っております。平成26年2月8日大阪(クリスタルタワー)で学校説明会を行います。受付は14時、開会が14時30分ですので、興味のある方はぜひ、ご来場ください。事前の申し込みは必要ありません。
詳しい日程はコチラからご覧ください。
楠隼中学校・高等学校への入学を志望している児童またはその保護者の皆様へのメッセージをお願いいたします。
公立では初めての全寮制男子校の中高一貫教育校として、皆様の期待に応えることのできる、魅力ある学校づくりにスタッフ一同がんばります。少しでも興味を持たれた方は、ぜひ学校説明会にご参加ください。また、遠方で参加できない方は、ホームページ、ブログで情報を発信いたしますので是非御覧ください。また、ご質問などがある場合は、遠慮無くお問い合わせ下さい。
4月より肝付町の高山高校内に準備室が移動となりました。
新しい連絡先は下記のとおりとなります。
住所 鹿児島県肝属郡肝付町前田5025
電話番号 0994-65-1192
Eメールアドレス nansyun-sh@edu.pref.kagoshima.jp
開校準備のお忙しいなか、ありがとうございました。びっくりするほどの魅力が詰まった学校のご紹介には、先生方はじめ開校準備に携わる皆様の熱い気持ちが伝わってまいりました。2015年度の開校が本当に楽しみです!